最近思わぬところでトロイ戦争に関わるものを読む機会がある。いまだにトロイ熱が冷めずに、本屋や図書館で関連書物を漁ったりするのだが、そういう時には全然出てきてくれないのに、何も考えずに借りた短編小説なんかにいきなりアガメムノンだのアキレスだのという名前が出てきたりするのは何だか皮肉だ。
例えば最近では「死神とのインタビュー」なるノックスの短編に、「カッサンドラ」という話が載っているのを発見した。名前の通り、カッサンドラ嬢が主人公なのだが、何だかとても悲しいような萌えるような、アガメムノン×カッサンドラ萌えな方には是非お勧めしたい物語だった(ABBAのCassandraなどを聞きながら気分を盛り上げるとなお良し)。
この話は語り手がオデッセウスの息子テレマコスだったりして、老後のオデッセウスも出てくる。
で、何でテレマコスがカッサンドラの話をするのかというと、どうも放浪後にやっと帰還したオデッセウスが今一家庭に上手く馴染めないのを、何とか慰めようとトロイ戦争についての話を引っ張り出した、というのがきっかけなのだ。常ならばこれが逆効果、戦争について話したがらないオデッセウスの機嫌を損ねるだけなのだが、カッサンドラについては何故か進んで話し出すオデッセウス…。まあオデッセウスは家族の努力も空しく再度放浪の旅に出て、二度と戻らなかったというリアルすぎる話もあるのだが。それよりもこの話の中ではアガオデやピュラデス×テレマコスらしき記述(いや、妄想ですけど)がちょこちょこ入ってて、トロイ好きな腐女子の方ならご満足頂けるかと思われますです、はい。あとアガメムノンとメネラオスの兄弟が非常に良く描かれています。特にメネラオスが、か、可愛い!?何この天然ちゃん!という感じ。
ちなみにカッサンドラについては、ヴォルフの「カッサンドラ」という小説もあるのですが、ここではアガさんがものごっつい嫌なおっさんとして描かれている上、アキレスに至ってはけだもののごとく扱われていて、ちょっと泣いた。でもちゃんとパトロクロスを最愛の友、とか書いてくれたので許す。アキがけだものになったのも元はと言えばパトのためやからね。ノックスがギリシャ側から書いたのと逆で、トロイの心情で書いてるので、ヘクトル兄さんやトロイ側の方々の描写が多いです。
まあ、今回はこんなもんですか。世の中には色々ありますね〜、さすがホメロス。で、なんで私が「死神とのインタビュー」なんつー、トロイと何の関係も無さそうな本を借りたかっていうと。”学校の図書館で偶然以前から欲しかった「ゲイ短編小説集」を発見し、喜び勇んで借りようとしたのは良いが、受付に綺麗なおねえちゃんがいるのを思い出し、何となく気まずかったので、全く関係ない文学作品も一緒に借りてごまかそうと、瞬間的に手を伸ばした本”が「死神〜」だったわけなんだな。もう、AV借りる男みたいな心境だな、私_| ̄|○
ハリー・ポッターと炎のゴブレット 上下巻2冊セット (4)
J. K. ローリング, J. K. Rowling, 松岡 佑子
この前図書館に奇跡的にあったので、借りてみました。以前、映画感想で、ハリポタシリーズのどこが面白いのか全然理解できない!と書きました。実際何でベストセラーになってるのか不思議で不思議でしょうがなかったんです。もっと面白くて心に残るファンタジーは世の中にたくさんあるから。じゃあなんでわざわざ読むんだよ、とつっこまれるかもしれませんが、批判するにはそれ相応の努力をしないとフェアじゃないかな、などという勝手な思い込みから、苦労してシリーズ読破してきました。
で、結論から言います。読了後思ったこと。ハリポタってこんなに面白かったっけ?
今回は本当にハリポタ人気の秘密が分かったような気がするのです。初めて読んでて楽しいと思えました。今までの作品のように、一生懸命飲み下すように読まなくても、さくさく消化できましたよ。ま、前半の展開は少し鬱陶しく、何度も読むのを止めては一息つき、自分自身に喝を入れながら読み進めていたのですが、後半、雲行きが怪しくなってくるにつれて俄然物語が生き生きとしてきたんです。おお?と思いながらページを繰っていくと今まで巧妙に張られてきた伏線がどんどん現れてきて、素直に感動してしまいました。あと、ちょっと泣きました。
ウィンブルドン
ラッセル・ブラッドン, 池 央耿
さて、ある一部の女子に絶大なる支持を受ける本書。表題の通り、テニスの世界大会ウィンブルドンの決勝を舞台に起こる事件が描かれてます。主人公は二人の天才テニスプレイヤー、オーストラリア人キングとロシア人のツァラプキン。この二人は親友でもあり、また保護者と被保護者的な関係でもある(キングは24、ツァラプキンは17歳)。育った国も環境も全く違う二人は何故か惹かれあい、離れられない仲になる。最初は言葉も全く通じなかったが、心とテニスを通じてお互いを知っていく。
最終的にこの二人がウィンブルドンの決勝で戦うことになるのですが、その試合には恐ろしい罠が仕掛けられていたのです…!圧倒的な臨場感と息詰まる迫力のテニス・サスペンス(解説より)ということです。
正直やおい目当てで読みました、ごめんなさい^^;
確かに噂に違わずすごいやおいでした。これは、作者公認ではないか?と思うほど主人公二人がらぶらぶらぶらぶr(以下略)してるんですよ。男女の関係より、男同士の濃密な空気(?)が行間から溢れてくる!(笑)
ま、もちろんそういうやおい的な雰囲気にも十分満足したのですが、それより、普通のサスペンスとしても超一級なんです、この作品。実は本の薄さと、絶版になっているという事実(1982年出版)から、あんまり面白くないのかしら、と思うところもあったんですけど、大間違いでした。近頃こんなに手に汗握る思いをして本を読んだのは久しぶりです。話の筋的にはよくあるものなので、ちょっと間違うと三流小説になりかねないのに、そこにテニスの緊迫感溢れる勝負を絡め、息を呑む迫力を最後まで持続したのは見事!これを読んだ後はテニスの大会が見たくなりますよん(でも今はケーブルでも放送してない。がっかり)今年読んだ本の中でも最高レベルです。
ちなみに、ポール・ベタニー主演の同名映画「Wimbledon」とは何の関係もないです。こっちも映画化したら面白いだろうに。
世界の中心で愛を叫んだけもの
ハーラン・エリスン, 浅倉 久志, 伊藤 典夫
SFの短編です。題名を聞くと、今話題のセカチューを思い出す人が多いかもしれません。人によってはエヴァの最終話とか。
で、多分それらの原点がこの小説だと思うんです。すごく不思議な、異空間のできごとのような話が多いです。SFというより幻想小説と言った方がいいかな。どの話も印象に残ります。
ちなみにさりげなく萌えもあったり(私だけかもしれんが)。はっきり男同士の愛情に触れている箇所は2つありますが、他の話もなぜか萌え萌えな雰囲気を醸し出しているような気がします。解説とか読んでると、どうやら作者自体が強気受け(実はへたれ)くさいのが原因かと。あ、石投げないで。
やっと読み終わりました。実は上巻を読んだのが去年の夏。んで、そのままずーっと本棚の奥にしまっとったんです。
確かに上巻はすごく面白くて、怒涛のごとく事件が押し寄せ、あっという間に読んじまったんですが…。何となくあの分厚い本を見ると手が伸びなくて、今年に至っちまったわけなんです。あまりにも人気があった、っていうのも読みづらくなっちゃった原因なのかも。ベストセラー、っていうのが苦手なんです。特に理由はないんだけど。
しかも学校の図書館にリクエストして購入してもらったのに、予約がいっぱい入っちゃってて、一週間しか借りられなかったという苦い思い出も(結局古本屋で買った)
まあ、そんなわけで一年ほったらかしにしていた本書、やっと読むことができました。
やっぱり面白かった〜〜!読み始めたら止まらなくて、上巻同様あっちゅう間に読んでしまいました。
もともと宮部さんの文章って読みやすいから好きなんですが、「模倣犯」では更にストーリーの展開が目まぐるしく、起伏に富んでいて、全く飽きませんでした。
多分このストーリーの中で私はかなり色んな人に感情移入して、怒ったり悲しんだりしてたと思います。被害者、加害者その家族。それを取り巻くマスコミや一般の人々。とにかくたくさんの人たちが一つの事件を巡って色んな思いや感情を交錯させ、時にはぶつかり、時には助け合う姿には考えさせられるものがあります。
中にはキャラ的にむかつく人もいるし、読んでるこっちが腹立たしいようなことをやってのける奴もいます。でもそういういらいら感もちゃんと伏線になってて、後半はものすごいカタルシスを感じられるつくりになってます。
とにかく読んでると自分が物語りにのめりこんでいることに気づきます。う〜ん、やっぱ宮部さんはすごい!
おすすめの一品です。
さいはての島へ―ゲド戦記 3
アーシュラ・K. ル・グウィン, 清水 真砂子, Ursula K. Le Guin
うわーん。泣いたよ〜。
毎回このシリーズには泣かされる…。よく考えたらたった三巻なのに、もう随分長いこと読んでいる気がする。というか、むしろゲドと一緒に旅をし続けてきたようにすら思える。だから最後はある種の満足感と、ものすごい寂しさを同時に感じて、とっても複雑な気分になってしまうのだ。(何しろ生まれた時から人生の終わりまでずっと見守ってきたわけだから)
ゲド戦記に共通する魔法に関する観念とか、生と死の世界とか、考えさせられることが多かったです。ル・グウィンってすごいなぁ〜。また続きが読みたいです(^_^)
ユートピア
トマス・モア, 平井 正穂
やあ、まだまだ暑さが続いてますね〜。もう小中高生は夏休み終わりで宿題に必死な頃でしょう。ごろごろしてるのは大学生だけ、っと。
で、そんな怠惰な生活の中で、ちょっと小難しいものでも読んでやろうと思い、積読状態になっていた、トマス・モアの「ユートピア」に手を付けてみました。ユートピアってのは、今でも理想の国家や世界を意味して使ってますけど、解説には机上の空論的な理想論の意味でも使われる、と書いてあります。
この本に書かれてる「ユートピア国(ギリシャ語で”どこにもない国”)」の政治や経済システムは、一見とても理想的なんだけど、私にとっては極端すぎて逆に怖い感じがしました。まるでマトリックスやリベリオン(つまりは華氏451度)のごとく、人間が国家やシステムに支配され、暴力も戦争も無い代わりに自由も無い偽りの世界が思い起こされます。簡単に言うと、ユートピアという国は、解説にも書いてあるように(この解説、非常に分かりやすくて秀逸です)成功した共産主義国家なんです。個人の利益を追求するよりも、共有の財産をみんなで分け合うシステムの方がよろしいというのがモアの考え方であったわけです。しかし今の世の中で共産主義国家の有様を見れば何とも哀しい話ではあります(結局人間の問題でもあるので、一概に共産主義が悪いとも言えませんが)。財産共有などの極端な考え方は、先にも述べたように危険な印象を与えるものです。私はモアは確信犯なのかそれとも本気でこんな世界を夢見てるのか、と疑問だったのですが、最後の最後にモア自身の考え方として、このユートピアの制度がわが国で実際行われることは非常に難しいだろう、と締めくくっていることからも彼自身もこの国のあり方にはまだ熟考の余地があると考えているようです。ユートピアってのは結局「どこにもない国」というわけ。
で、もう一つ気になったのが最終章、ユートピアの宗教に関してで、ここではモアの宗教家としての苦心の跡が垣間見えます。国家の制度については理性に基づいた、極めて明快な理論でさくさく書いてあったのですが、やはり宗教との折り合いの付け方が難しかったらしく、他の項と違い、どうも歯切れが悪い。システムに関する理論であればどのような人も納得させられる自信を持って書いているモアでも、やっぱり宗教を国家制度として組み入れるというのは難しかったんだろうな〜、と。とはいえ宗教(キリスト教)こそが国家の芯となるべきであるというこの信念は曲げられなかったんだろう…。こういうジレンマはクリスチャンとしては良く分かります。ま、私がこちゃこちゃ書かなくても全て解説に分かりやすく書いてありますがね(^_^;)
えっと、腐女子的オチとしてはエラスムス×モア、娘婿×モア、ヘンリ8世×モ(略
_| ̄|○・・・すいません
地獄の奇術師
二階堂 黎人
おいおい、こんな本出版していいんかい。読者なめんのもたいがいにしろ!
何が新本格派か。
何がポスト乱歩か。
名探偵コナンのトリックですら解けた試しの無い私が、犯人すぐに分かっちゃったよ(多分犯人からの最初の電話のところで大抵の人が気づくと思います。サービスしすぎ)。というか犯人からトリックから動機から前半部で全部解明しちゃったよ、こんちくしょう。
「あのー、犯人分かっちゃったんですけど」
とか心の中でずーーっと呟いてたよ(怖)
まさか当たってないだろう、と思ってたら全部合ってたよ、何だよ、コレ。
もう後半は自分の推理の確認作業と、全然分かってない登場人物たちを生暖かい目で見守るためだけに読んでたようなもんなんですけど。こんなちゃっちいトリックでいいのですか?こんなアホな動機でいいのですか?登場する人々全部アホですけどいいのですか?薀蓄部分がすごくウザイのはいいのですか?あんまりすごい推理してないのに褒め称えられる主人公がとてもウザイのですがいいのですか?最後オカルトチックに纏めようとしてさらに話が混乱していますがいいのですか?乱歩風にしようとして、昭和チックにしてるのがとても気持ち悪いのですがいいのですか?全体的にものすごくこじつけがましいのですが(以下略)
まあ、何と言うか。もうちょっと色々勉強してください、二階堂先生…。他人の作品批判してる場合じゃないっすよ。事件そのもののオチにもがくーっ、ときたのに、最後の最後に十戒なんかを引用してさらに読者をこけさせたある種の才能がある方だと思うので、ある意味期待してます。屋植がヤーウェって、ねえ(笑)さらに巻末の島田御大の論点のずれた解説がこの作品のトンデモぶりに拍車を掛けています。と学会に推薦したろか、ほんま。
ちなみに二階堂先生の「人狼城の恐怖」は栄えある喜国雅彦探偵小説大賞(笑)を受賞されてます!
予想外に面白かったです。私はキング結構好きなんですけど、年々彼の作品って長くなってるような気がして、敬遠してたんです。この作品も上下巻に分かれているんで、長いといえば長い。でも全然苦じゃなく、すらすら読めてしまいました。実はこの「呪われた町」を読むきっかけになったのが、小野不由美の「屍鬼」の巻末にある、宮部みゆき女史の後書でした。で、そこに書かれているように、確かに「呪われた町」と「屍鬼」はよく似ている。というか、小野さんのキングへのオマージュ、だそうです。もともと「呪われた町」自体も、吸血鬼伝説が近代アメリカでも成立しうるか、という一種の実験のようなものなので、小野さんは、それを日本に置き換えた設定で挑戦したということになるでしょう。私は「呪われた町」の方が好みなのですが、それぞれ特徴があって、二つとも甲乙付けがたい素晴らしい小説です。ただ、先にキングを読んでおいた方が分かりやすいかも。屍鬼はとにかく長くて、心理描写とか設定とかむちゃくちゃ細かいです。吸血鬼という存在に対するアプローチも違っていて、面白いのですが、ちょっと読みにくいかもしれません。
キングの小説は絶対的な悪があって、それに弱い存在である人間が頑張って抵抗して打ち勝つ、という王道な流れが多いのですが、そこにはやはりキリスト教的な力が入ってきます。私はいつも、ここらへんをクリスチャンじゃない人がどう受け止めてるのかな〜、ととても疑問なのですが、どうなんでしょうね。納得できるのかな。といっても「呪われた町」では、キリスト教というのは一種の象徴にすぎなくて、最終的に悪に打ち勝つのは根源的な善の力、だと言ってますけどね。ただ信仰に関して考えさせられる場面が多々あって、特にキャラハン牧師の最後には本当にぞっとしました。作中に何度も出てくる「死よりも恐ろしいものがある」という言葉がまさに実践された形で…ここらへんもクリスチャンでなければ分からないような部分があるかもしれません。とはいえ、本当に素晴らしくまとまりの良い作品で、怖いだけではなく、哀しみが漂うラストは秀逸。ぜひ子供たちの読書感想文の題材におすすめしたい(笑)
ちなみに私はもしジミーが死ななかったら、ベンと同棲して、マークを養子に迎えて、新しい家族を作るんだ!と信じて疑いませんでした…(泣)またホモかよ、私_| ̄|○
薔薇の名前〈上〉 薔薇の名前〈下〉
河島 英昭, ウンベルト エーコ
私のNo.1トラウマ映画「薔薇の名前」の原作です。ウンベルト・エーコという人は記号論学者らしく、それっぽいのがわんさか出てきます。というか全体的に哲学、宗教、語学と、とにかくややこしい。特にキリスト教に関する話が主流なので、知識の無い人にとってはきついかもしれません。私はたまたまクリスチャンの家系で育って、聖書関連はみっちり叩き込まれて(笑)いるので、歴史的背景や聖書の引用などは分かったのですが、それでもついていけない所が多々あって、何度も挫折しそうになりました(^_^;)
でもですね、そういう苦痛のようなものを乗り越えても読む価値はあると思います。一旦勢いに乗ったらもう止められない。読者にできるのはページをめくることのみです。本書のカテゴリーとしては、僧院を舞台にしたミステリーというのが、やはり一般的なのでしょうが、私はどっちかというと、宗教的部分においてかなり影響を受けました。実はこの作品には自分の宗派に対する疑問が、驚くほどズバッと書かれていて、なるほどなるほど、と唸りながら読んでしまいました。同じ神を信奉していても、ちょっとした解釈の違いで対立するものになりかねん、というのも頷けますね。しかし、だから宗教は怖い、とは言う気にはなりません。自分の信じてるものだって正しいとは言い切れないですもんね〜。難しい…。
ま、その他もいろいろ面白い話が書き連ねてあって、読み応えがあります。ウィリアムとアドソの師弟のキャラもGOOD!謎解きにも純粋にわくわくします。映画とはまた違った、更に深い物語が展開します。ただ、あの少女との出会いと別れは、映画の方が良かったな〜。「薔薇の名前」っていうテーマがより印象的に提示されてましたよね。
余談ですが、この作品何かに似てる、と思ったら京極氏の「鉄鼠の檻」ですね。あれは日本のお寺が舞台でしたが、もしかして薔薇の名前へのオマージュかな。試しに「薔薇の名前」と「鉄鼠の檻」で調べるとかなりの件数がhitしたんで、割りと有名な話みたいです。ただ、私の独断と偏見から言わせてもらうと、鉄鼠よりは薔薇の方が面白いです(^_^;)多分私にとっては薔薇の名前の世界の方が馴染み深いからなんでしょうが、鉄鼠の檻は京極氏の失敗作なんじゃないかと、勝手に考えてます。鉄鼠は仏教の入門書としては素晴らしいと思うんですけど。ま、どっちもミステリー自体より薀蓄が主なのは似てるんですけどね。
追記
もちろん私が苦労して読むくらいですから、ホモ描写ありです。なんたって薔薇族の語源だもんねえ。
家守綺譚
梨木 香歩
うーん、正直唸ってしまう。すごい小説が出たもんだ。梨木さん独特の世界観が満載です。そうだなー、蟲師、とか陰陽師が好きな人なら絶対はまると思います。妖怪好きな人も。主人公は京極堂シリーズの関君みたいな人で、うだつは上がらないけど、結構柔軟な姿勢で、色んな不思議な現象を受け入れています。すごいことが起こるわけじゃありません。ただただちょっと普通より不思議な話、日常風景を書き綴った作品なんですが、とっても穏やかでほんわかした気持ちになれる、と思います。続編が見たい!
あと、続編というか、主人公のお友達が主人公の(ややこしい)「村田エフェンディ滞土録」という本も出てます。こちらも神様だの不思議な現象が出てきますが、家守より現実味を帯びていて。正直最後は涙がぼろぼろ。心にぐぐっ、と染み渡る話です。って、最近私泣いてばっかりだわ(^_^;)
こわれた腕環―ゲド戦記 2
アーシュラ・K. ル・グウィン 清水 真砂子 Ursula K. Le Guin
児童文学は好きなつもりなんですけど、実はこのシリーズまだ読んでなかったのです。第一部、影との戦い、をひいひい言いながら読んで久しいことに気づき、大学の図書館で借りてみました。最近ファンタジーにのめり込めない自分がすごく寂しく感じていたりしたのですが、この作品のお陰で、昔の情熱(?)を取り戻せたように感じます…。児童文学というには結構地味な出だしだったので、最初は読みにくかったのですが、読み始めたらもう止まらない。そして、ラストは涙も止まらない(泣)闇の世界と光の世界。言葉では到底説明もつかないようなことどもが、とても緻密な文章で書き綴られています。登場人物も、本当に生の人間として描かれていて、インパクト大。ものすごい冒険譚、というわけではないけど、胸にずっしりくる、忘れられない物語になりそうです。子供の頃に読みたかった…。