2004年08月01日

薔薇の名前

薔薇の名前〈上〉   薔薇の名前〈下〉
薔薇の名前〈上〉   薔薇の名前〈下〉
河島 英昭, ウンベルト エーコ

私のNo.1トラウマ映画「薔薇の名前」の原作です。ウンベルト・エーコという人は記号論学者らしく、それっぽいのがわんさか出てきます。というか全体的に哲学、宗教、語学と、とにかくややこしい。特にキリスト教に関する話が主流なので、知識の無い人にとってはきついかもしれません。私はたまたまクリスチャンの家系で育って、聖書関連はみっちり叩き込まれて(笑)いるので、歴史的背景や聖書の引用などは分かったのですが、それでもついていけない所が多々あって、何度も挫折しそうになりました(^_^;)

でもですね、そういう苦痛のようなものを乗り越えても読む価値はあると思います。一旦勢いに乗ったらもう止められない。読者にできるのはページをめくることのみです。本書のカテゴリーとしては、僧院を舞台にしたミステリーというのが、やはり一般的なのでしょうが、私はどっちかというと、宗教的部分においてかなり影響を受けました。実はこの作品には自分の宗派に対する疑問が、驚くほどズバッと書かれていて、なるほどなるほど、と唸りながら読んでしまいました。同じ神を信奉していても、ちょっとした解釈の違いで対立するものになりかねん、というのも頷けますね。しかし、だから宗教は怖い、とは言う気にはなりません。自分の信じてるものだって正しいとは言い切れないですもんね〜。難しい…。
ま、その他もいろいろ面白い話が書き連ねてあって、読み応えがあります。ウィリアムとアドソの師弟のキャラもGOOD!謎解きにも純粋にわくわくします。映画とはまた違った、更に深い物語が展開します。ただ、あの少女との出会いと別れは、映画の方が良かったな〜。「薔薇の名前」っていうテーマがより印象的に提示されてましたよね。
余談ですが、この作品何かに似てる、と思ったら京極氏の「鉄鼠の檻」ですね。あれは日本のお寺が舞台でしたが、もしかして薔薇の名前へのオマージュかな。試しに「薔薇の名前」と「鉄鼠の檻」で調べるとかなりの件数がhitしたんで、割りと有名な話みたいです。ただ、私の独断と偏見から言わせてもらうと、鉄鼠よりは薔薇の方が面白いです(^_^;)多分私にとっては薔薇の名前の世界の方が馴染み深いからなんでしょうが、鉄鼠の檻は京極氏の失敗作なんじゃないかと、勝手に考えてます。鉄鼠は仏教の入門書としては素晴らしいと思うんですけど。ま、どっちもミステリー自体より薀蓄が主なのは似てるんですけどね。

追記
もちろん私が苦労して読むくらいですから、ホモ描写ありです。なんたって薔薇族の語源だもんねえ。

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投稿者 yukiusa : 2004年08月01日 21:17 | トラックバック
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