予想外に面白かったです。私はキング結構好きなんですけど、年々彼の作品って長くなってるような気がして、敬遠してたんです。この作品も上下巻に分かれているんで、長いといえば長い。でも全然苦じゃなく、すらすら読めてしまいました。実はこの「呪われた町」を読むきっかけになったのが、小野不由美の「屍鬼」の巻末にある、宮部みゆき女史の後書でした。で、そこに書かれているように、確かに「呪われた町」と「屍鬼」はよく似ている。というか、小野さんのキングへのオマージュ、だそうです。もともと「呪われた町」自体も、吸血鬼伝説が近代アメリカでも成立しうるか、という一種の実験のようなものなので、小野さんは、それを日本に置き換えた設定で挑戦したということになるでしょう。私は「呪われた町」の方が好みなのですが、それぞれ特徴があって、二つとも甲乙付けがたい素晴らしい小説です。ただ、先にキングを読んでおいた方が分かりやすいかも。屍鬼はとにかく長くて、心理描写とか設定とかむちゃくちゃ細かいです。吸血鬼という存在に対するアプローチも違っていて、面白いのですが、ちょっと読みにくいかもしれません。
キングの小説は絶対的な悪があって、それに弱い存在である人間が頑張って抵抗して打ち勝つ、という王道な流れが多いのですが、そこにはやはりキリスト教的な力が入ってきます。私はいつも、ここらへんをクリスチャンじゃない人がどう受け止めてるのかな〜、ととても疑問なのですが、どうなんでしょうね。納得できるのかな。といっても「呪われた町」では、キリスト教というのは一種の象徴にすぎなくて、最終的に悪に打ち勝つのは根源的な善の力、だと言ってますけどね。ただ信仰に関して考えさせられる場面が多々あって、特にキャラハン牧師の最後には本当にぞっとしました。作中に何度も出てくる「死よりも恐ろしいものがある」という言葉がまさに実践された形で…ここらへんもクリスチャンでなければ分からないような部分があるかもしれません。とはいえ、本当に素晴らしくまとまりの良い作品で、怖いだけではなく、哀しみが漂うラストは秀逸。ぜひ子供たちの読書感想文の題材におすすめしたい(笑)
ちなみに私はもしジミーが死ななかったら、ベンと同棲して、マークを養子に迎えて、新しい家族を作るんだ!と信じて疑いませんでした…(泣)またホモかよ、私_| ̄|○