やっぱり私リドリー・スコットの撮る戦争物には好感が持てます。普段からハリウッド映画の展開に慣れているせいか、こういうきっちりと丁寧に映画を作ってくれる人が好きなんですね。戦闘シーンの静けさや画面の独特の暗さ、心を打つ音楽。リドリー節全開。全てにおいて素晴らしい、と言い切れる作品です。この人の描く戦いには一貫して「空しさ」が付きまとう。なぜ戦うのか？なぜ同じ人間が殺しあわねばならないのか？そんな真摯で率直な疑問が、少しも説教くさくなく心に迫ってくる。戦闘シーンは作品を彩るアクションという意味だけではなく、一人ひとりがその無意味さに気づくように計算されているのだろうと思います。静かな音楽に戦いの音はかき消され、ただひたすらに鳥瞰で人の群れが交じり合い、ぶつかり合う様が描かれる。ああ、これって神様の視点だよなー。だとしたら何て人間って哀れな存在なんだろう。命がけで神に尽くす人々に対する神の視線はとても憐れみ深く、悲しい。

自分がキリスト教徒なので、宗教に関してはかなりひっかかる所が出てくるだろうと覚悟していたけど、案外そうでもなかったです。サラディン様の「nothing, everything」という台詞にはじーん、ときてしまいました。これも結構解釈が分かれるところなのかな？私には、エルサレムという土地には何の価値もない。けれど自分の信ずる神の聖地としてのエルサレムは全てを賭けて守る価値がある。という風に思えました。第三者から見れば、たかが聖地の一つや二つ、そんなもののために命を犠牲にするなんて馬鹿らしいと思えるかもしれません。しかし、信ずる神、宗教のために命なんて惜しくない、って人は一杯いるんですよ。現に今でも・・何百年も同じ戦いが続いている。それってすごいことです。無宗教者が多い日本人にはなかなか理解しがたいことですが、それが現実です。自分の信ずるものについては一歩も譲れないという気持ち、狂信的に見えてしまうかもしれないけど、私にはすごくよく分かるのです。リドリーは信仰を大切にしている人だと思うので、戦う位なら宗教なんか捨てればいい、という捨て鉢な結論を出したわけじゃないと思いたい。というより、聖地はエルサレムではなく、常に心にあると言いたかったのかなと感じました。現在のイスラエル・パレスチナ問題に向けて彼が言いたいのは、本当にそれが神の望んでいることか、と。それは人間の欲望やエゴが生み出した戦いに過ぎないのではないかということのような気がする。少なくとも私はそういうメッセージを受け取りました。本当に聖なる地を得られるのは、戦いではなく、真の信仰によってしかあり得ないと、私もそう思います。バリアンがゴルゴダの丘に向かう姿にはっとさせられました。彼の容姿がだんだんとイエス・キリストに似てきてるんですよ。よく見ると、背負った大剣が十字架のようにも見えて。それはさすがに穿ち過ぎかもしれないけど、もしかしたら監督にもそんな意図があったとしたら面白いな、と思います。神の恩寵の外にあると感じ、見捨てられたと信じたバリアンその人が、実は最も神の意思に沿うた行動をした人だったのかもしれません。

主役のオーランドには正直辟易。やっぱり苦手だわ、この人。体重増やして貫禄出したのは認めるけど、演技の方はさっぱり。何をやっても「オーランド・ブルーム」でしかないところにこの役者の悲劇があるんだろうなあ・・。エルフ役が最初で最後の当たり役だったことを思うと、PJも酷なことするよ、と思ったり（笑）
ボードワン様は噂に違わず素晴らしい。ノートンをキャストしたスタッフ（監督かな？）には拍手。声と目、そして身のこなしだけで高貴な雰囲気の漂うイスラエル王を見事に演じていました。喘いでいる王様にちょっと萌えてみたり・・・。命を削った鞭打ちシーンにはぶるぶるっときました。威厳が漂ってるのに華奢で可愛らしい感じも出てて、萌え～。しかし最期、彼の素顔を見せる必要があったんでしょうかね？シビラの表情だけでも分かる気がしますが、監督は敢えてショッキングな映像を見せることで、彼の長年の苦悩を印象付けたかったのかもしれませんね。美青年だった頃のボードワンを想像するとかなりな涎もんですが。その頃から右腕的存在だったろうティベリウスやゴッドフリーとの関係とか、打ち破ったこともあるサラディンとの出会いとか・・(；´Д｀)ﾊｧﾊｧ･･･
サラディン様はハッサン・マスードという、シリアでは大スターな方らしいです。ほっそりとした体格の内に溢れる威厳と高貴さが漂い、何万という大軍を従え、サラディンという英雄のカリスマ性を見事に発揮されておりました。もうとにかく素敵、素敵、セクシー。シビラの存在吹き飛ばすくらい色っぽかったですよ（笑）サラセン軍の陣営はなかなか濃い感じで、主従関係に萌え～。側近二人に萌え～。癒し系のイマドと説教係のカレド（途中できっついこと言ってた髭の人・・ってみんな髭だああ！）。サラディン様両手に花、いやむしろサラディン様自身が花なので、もうイスラム陣営はお花畑（何を言っているのか）。っつか多分裏設定ではカレドは愛人だと思うよ。いくら側近でもあれだけずばずば言えるのは何か弱みを握っているからであって、つまり遠征の時は夜伽係をしているに違いない！そこにたまにイマドが加わったりして、くんずほぐれつ、リバ有りの乱こ（殴

ボードワン、サラディン両トップが本当の主役といっても過言では無い位素晴らしい存在感を放っていました。この二人だったからこそ平和が保たれたんだなー、と思うと偉大という言葉だけではすまされないような。

他にも脇役が豪華すぎて、一々突っ込んでたらきりがないのでここら辺で。あ、これだけは言わせて！最初のシーンでめっちゃいやらしい感じの司祭いたでしょ。あれ、あの、アンダーワールドの狼＆タイムラインのイギリス貴族マイケル・シーンなんですよ！出番のあまりの少なさにがっくりきたけど、めちゃくちゃ存在感があったよ。実は彼バリアンの兄らしいです。始めの辺りは大幅にカットされているらしく、人間関係が良く分からないのが残念ですが、きっとDVDでは全部入ってくると思うので期待してます。っていうかバリアンは司祭に一回位ヤられてるよね、はは。よく考えたらタイムラインに出てるシューリス、マイケル、マーカスそろい踏み。マーカスなんてまんま同じ役だしなあ（笑）

しかしめずらしく男の衣装が美しい映画だった・・・。

参考
KOH公式
KINGDOM OF HEAVEN まとめサイト@2ch
すごく勉強になる。Q＆Aは見るべし。
SLASH
Kingdom of Heaven Slash Fanfiction

追記：
最後に出てくるリチャード獅子心王、かなりのミーハーだったらしく、サラディンに会いたいがために遠征に行っただとか、ラブレターを送り続けただとか話題に事欠かない人です。バリアンにわざわざ会いにきたのも乙女心のなせるわざか・・（違

キングダム・オブ・ヘブン 公式完全ガイド

（かなり中身充実なガイドブックらしいです）

学校や家ではものすごく真面目なスティーブ、実は割りとませていて、発展場とかに行って行きずりのセックスなんかを楽しんでいたんですね。でもそれってかなり危険なことだし、唯一彼の秘密を知っている隣人の女友達リンダも止めるように忠告します。まあそんなこといっても、他に出会いの場があるわけでなし、やっぱりスティーブはスリルを求めて発展場＝公衆トイレに入り浸ってます。ところが、そこでなんと学校一クールで成績優秀＆陸上部のエース、ジョンにナンパされてしまうのです！うわお！これってかなりやおいの王道ではありませんか！もうここらへんで管理人はノックアウトされてじたばたのた打ち回っておりました。相手が同じ学校の生徒だと知ったジョンはびっくりして最初は突き放したような態度をとりますが、スティーブが去ろうとすると、「両親は留守？」と何とも怪しげな発言。その後スティーブの家へ行った二人はいつの間にかベッドへ・・・。しかし途中で我に帰ったジョンは、大慌てで逃げてしまいます。

もー、こんな感じでジョンが始終へたれなんですよ。スティーブがみんなに自分がゲイであることを知ってもらいたいと思うようになるのとは反対に、何とか二人の関係を隠そうとする。バリバリのエリートで、いわゆるマッチョ？であるジョンには周囲の反応が恐ろしくてたまらなかったんだろうと思う。何か「モーリス」に展開が似てる気がするのですが、あれよりは時代が新しく、主人公たちがまだ若い分、未来に希望が持てる終わり方になってて爽やかなラストです。ジョンはだめだなあ、と思う反面、自分だったら絶対ジョンのような生き方になるだろうな、としんみりしてしまいます。難しい問題だよなぁ・・でも本当に二人が愛し合ってるところに救いがありました。ストーリーの中でもロミオとジュリエットの話が何回か出てくるんだけど、きっとこの二人の報われない恋を象徴してるんだろうなー、なんて思ったり。あと、周りの女性たちの理解があってとても素敵でした。特にリンダちゃんは本当にいいキャラで、こんな女友だちがいたら幸せだろうなー、って感じの子。映画の設定上デブとかブスとか言われてるけどかなりセクシーで美人だと思います。ゲイ映画につきものの、特有の暗さがないのはやっぱり時代の移り変わりなのでしょうかね。昔よりずいぶん周囲の理解が出てきてるみたいです。愛の喜びとか悲しみ、ヘテロもホモも関係なく共通のものなんだよねー、ってのがよく表現されててすごく素敵な映画だと思います。すっごい切ないけど、同時に明日への希望も湧いてくる良いラストでした。

しかし本当にこれどこのBL？って位萌えましたよ・・・。ダンスパーティーの時お互いのパートナー越しに見つめあう二人。その後リンダと一緒に夜を過ごす約束をしたスティーブ（純粋に友達としてね）が家の鍵を開けたまま着替えていると、そこにパーティー帰りのジョンが！びっくりしているスティーブに「トイレを貸して欲しい」と、またへたれ発言爆発なジョン。その後再び部屋に入ってきたジョンは我慢できなくなってスティーブにキスしてしまうのです（バンバン！！←管理人が床をたたく音）このキスシーンが萌えー！！もう、本当に我慢して我慢して、でもどうしてもスティーブが欲しくてたまらなくなった末のキス！って感じで(；´Д｀)ﾊｧﾊｧ･･･きっとスティーブの夢を見て朝パンツを洗う羽目になったことが何回もあったんだろうな、とか妄想するととても楽しいです（笑）
まあとにかくどこの腐女子の妄想を映像化したんですか、と監督を問い詰めたい位のおいしい映像てんこもりです。もー、お薦め中のお薦め！一度でいいから見てみて下さい。こういう映画が増えてくれるととっても嬉しいんですけどね。

オールド・ボーイなんですけど・・・・これ本当にえぐいんですよね。私拷問の中でも歯抜きとかが一番嫌いなんですよ。自分が前歯二本折ってる上に、健康な歯を４本抜かれてるんで、他人事とは思えないの。なので上映中一生懸命耳と目を塞いでいる怪しい女がいたら私です。
とはいえエグさの中にもコメディっぽい感じもあって、実は上映中何回か笑ってたんですが。韓国映画って狙ってる笑いはぜんぜん笑えないんだけど（ほえる犬は噛まないとか）こういう真剣なシーンの中にすごく可笑しさがあって、好きなんですよね。ただ本当に残酷シーンは目を背けたくなるほど残酷です。ストーリーも負けないくらいエグい。

※ネタバレ（要するに近親相姦もの。正直ちょっと引きます。でも私はそのオチに全然気づいてなかったので、ほんとにびっくりしました。読めない展開っていう意味では素晴らしいです）

あ、私結構じわじわ凹みつつあるかもorz・・・苦手なんだよ、ああいう話(-_-;)
個人的にはひどい目に合ってるくせに割と元気なパク兄さんとおいしいとこ取りの催眠術師のお姉さんが気に入りました。

で、マイ・ボディーガードなんですけど。公開されてたときも出演者の割にはあんまり目立たず、広報が失敗したのかな、と思っていたのですが・・・実際見てみて、うーん、確かにこれ日本では受けないかも？と思ってしまいました。少なくとも私は好きじゃなかったです。実はこの話本当にあった事件を元に作られているみたいで、それを知ったときは思わず「ほんまかいな」と突っ込みたくなるほど壮絶な話でした。ってかR15指定だったんですね・・・・全然知らなかった。知っていればそれなりの対処、というか覚悟もしていっただろうに。まあ前半のシーンは良いですよ、ダコタもそれなりに可愛いし、デンゼル・ワシントンもまあまあそれなりだし（それなりばっか）。まあ普通にレオンっぽくなっていくのかしら。と思ってたらいきなりダコタ殺されちゃった。そして後半はずーーーーーーーーーーーっとデンゼルによる復讐という名の人間狩り。もうデンゼルのあまりのキ○ガイじみた残虐非道ぶりにがくがくぶるぶる・・・何でそこまで、っていうかもうやめてあげてー、と犯人達がかわいそうに思えてくるほどでした。少女とボディーガードの心温まる交流を期待して見に行ったらカウンターパンチくらうよ、まじで。一切感情移入を許さないからね、デンゼル。
ちなみに犯人は実は身近にいた、っちゅうありがちなオチもあったりするのですが、もうミッキー・ロークが弁護士やってる時点である意味ネタバレなんじゃないかと思ったことは秘密です。

えーっと今回の注目俳優さんはダコタのパパ役をやっていたマーク・アンソニー氏。もー、かわいくてかわいくて。実は有名なサルサの歌手さんらしいです（今彼の曲がんがん流してます。いい声（；´Д｀*））。上映中ずっとマークばっかり追ってたから。もちろん頭の中ではマークが誘拐されてあんなこともこんなことも！な妄想をずっと繰り広げていたから！！誰かSLASH知ってる方がいたら紹介してくださいorz
噂ではジェニファー・ロペスとかいう歌手だか何だかと結婚したらしいけど誰、それ、って感じ。まあただの噂だと思うけど（泣き笑いの顔で）
まあそんな感じですっかりマークのパパぶりにくらくら来ていた管理人は、最後の母親の言動とデンゼルのやり方にはかなりむかっときました。評価が低いのはここらへんも関係してます。特にお母さん・・・まあ怒りが沸点に達したのは分かるが。デンゼルもそういうことすんなよ。っていうか何の権利があってお前が裁く。
カトリックは自殺は罪なんだからね！ヽ(`Д´)ﾉﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

残念ながらレオンには遠く及ばない作品だったですよ。っつかラストのあれは無いだろ、あれは('A`)

追記：
最後の最後までクリストファー・ウォーケンを信用できませんでした（※ゲイリー・オールドマン症候群）。

※ゲイリー・オールドマン症候群とは？
あの名優ゲイリー・オールドマンが名前の由来。ある俳優の悪役ぶりを愛するあまり、いつどんな役を見てもこのキャラは絶対にラストで裏切る、とか途中で悲惨な死を迎えるに違いないといった妄想が頭から離れないという一種のノイローゼ。類例としてマイケル・ウィンコット、ショーン・ビーンなどの名前が挙げられることが多い。

（はい～! ドンドンドン! ウソウッソ! ドドンドドン! ウソで～す!!）