バスキア

最近うちのサイトではＢ級か萌え映画かのどっちかしか紹介してない気がする。そこで、たまには真面目な感想も書いてみるか、と思いつつ見た作品です。

しかしあれだね。今の私には萌えの神様が憑いてるのかしら。まさか、この作品がここ一番の自分的、腐女子的アタリ映画になってしまうとは･･。

まず基本的な内容。ＮＹ現代美術に多大な影響を及ぼしながらも、ヘロイン常習が原因で27歳という若さで夭折してしまった画家、バスキアを描いたノンフィクションもの。聞いただけで、いかにも暗そうな、救いの無さそうなストーリーではないか。私はこういう、”社会の底辺で見出された天才が、突如上流階級の仲間入りをし、金と名声を手に入れ、それゆえに身を滅ぼしていく”型の、破滅的な話が好きではないのです。というか、自分の生きるエネルギーを吸い取られてしまいそうなので、あまり見ないようにしてます。で、この作品もそういうものなんだろーなー、と先入観があって、見るのを後回しにし続けてきました。

ところがどっこい、いや、ほんとに見てよかったよ！なんつーかキャストがね、もう何かある層をリサーチしたんじゃなかろうか、と言う位見事にツボを突いてるんですよ。まずゲイリー・オールドマンを筆頭に、マイケル・ウィンコット、ウィレム・デフォー、ベニチオ・デル・トロなどなど。端役にもあれっ、という人が出ている。ヴィンセント・ギャロは生前のバスキアとバンドを組んでいた仲で、”自分の役”で出演していて、自画像（微妙）を披露したりしてるし、サム・ロックウェルなんか見つけられたのが奇跡に等しいほどの端役っぷり（もっとも彼はカメオとかではなくて、単純に売れていなかったからだと思うけど）。

まあ、そんな豪華キャストももちろんですが、私が非常に気に入ったのは、ゲイリーとマイケルが、なんと悪役じゃない！いや、それどころか非常に美味しい役でなおかつ死なない、という二重、三重の奇跡が起こっているところです。いや、もう本当にこの二人を見るだけでも価値ありますから！

ゲイリーはすごく素敵な役です。いつ豹変するかとドキドキしてたら、ずーーっと良い人のままで逆に肩透かし（笑）バスキアと同じく新進気鋭の画家だけど破滅型ではなく、バスキアの理解者であり、良き家庭人で、可愛い娘がいて、さらにそのパパっぷりが素敵…！娘になりたい！と本気で思いました。というか、親子ともども萌え。あまりにもおいし過ぎるキャラなのでおかしい、と思っていたら、監督がモデルだそうです（笑）

マイケル・ウィンコットは、たくさんの有名画家（ゲイリー含む）を世に送り出している実力派美術評論家の役。この人にしてはほんっとにほんっとに珍しいのですが、才能があって、優しくて、ホモで、笑顔が多くて、さらに登場後の話まで出るという至れり尽くせりな扱いのキャラでした。マイケルファン必見。寝ているマイケル、怒るマイケル、すっごい嬉しそうなマイケル、涙目のマイケル…これ一本で色んなマイケルが堪能できます(*´д｀*)ﾊｧﾊｧ

またこの可愛らしいおじさま二人の関係がどうもあやしい…。マイロ（ゲイリーの役名）は家庭を持っているので”？”って感じだけど、ルネ（マイケル）は完全にホモセクシャルです。どっちも実在の人で、特にルネはこの映画に協力してる（映画見た後にこの事実を知ると切ない気分になるのですが）ほどなので、多分カミングアウトしてるんでしょうね（あくまで多分、です）。まあそれは置いておくとしても、深読みしたくなるようなシーンがあったりして、非常に萌えさせて頂きました。お互い「Baby」「Beautiful」って呼び合ってるし。朝食も一緒にとっちゃう仲だし。

管理人が一番気に入ってるシーン：

バスキアのアトリエにやってくるルネ（マイケル）。「う〜ん、いいね〜」と作品を見てうっとりするマイケル（にうっとりする私）。さらにバスキアに今何時だと聞かれ、「５時11分」、と何も考えずに答えるルネ。すると、バスキアは自分の作品に「RENE 5:11」と描きこむ。で、「これを君に贈る」と。す、す、すわあぁ〜（謎）なんてかっこいいプレゼントの仕方でしょう！芸術家らしいセンスです。感極まって言葉を失うルネ。
次の朝、アトリエのソファで寝ているルネ（！）。か、可愛い〜、可愛いよマイケル〜。もうずっと観察していたいよー、という位に女子層のハートをがっちり掴んだマイケルの寝姿。そこへ何故かマイロ（ゲイリー）がやってくる。バスキアへの挨拶もそこそこに、「Baby、君の絵を描きたい」といきなりルネをナンパ。しかも美味しそうな朝食のメニューを並べ立て、ダメ押し。ルネは寝起きのまま、食べ物がある〜、とセレブらしからぬ理由でふらふらついていきます。バスキアに対しての言い訳なのか、意味不明な言葉を呟きながら（笑）
で、そんな二人を見て何故かむっとしているバスキア。ルネが出て行った途端に作品から「RENE 5:11」という字を消してしまいます。あのねえ。こんなシーン腐女子に見せちゃあいかんよ。もんのすごい三角関係図が頭ぐるぐる回っちゃったじゃないか。まさかマイケルとゲイリーで萌える日がくるとは･･･（笑）

まあ、このカップリングに限らず、「バスキア」は男同士のふか〜い友情がそこここに見え隠れする、密かな腐女子御用達映画なのではないか、と思う次第です。ベニチオとバスキア、ウォーホル（ボウイ激似）とバスキア、という幾分過剰依存に見えなくも無い関係があったり。

映画自体は思ったほどに重くなく、見やすかったです。バスキアという人があまりヒステリックではなく、むしろ子供っぽい朴訥さを持ったキャラクターだったからかもしれません。それに、監督がバスキアの親友でもあり、自身が著名な芸術家であるということも、バスキアを偶像化しすぎず、等身大に描くことに成功した原因かもしれませんね。実際劇中に登場するバスキアの作品は彼が作ったそうです。また、この手の話に多い、周りの人々の裏切りとか世間の変わり身の早さ、なんかはあまり描かれておらず、むしろバスキア自身の無知さや、自己中心的な言動が人を遠ざける結果になったんだろうと思わせる作りで、より一層哀しくなりました。ぎゃーぎゃー喚いたり怒ったり、の場面が苦手な人でも大丈夫です。多分喚くのはマイケルだけです（笑）

追記：
注目ポイントは、バスキア本人の所持品からセレクトした音楽と、貫禄十分のコートニー姉御（どこのビッ○かと思った）。

あと、ルネは「Suck my D○ck」じゃなくて「Suck my Pu○sy」って言ってるから、やっぱそういうキャラなんだね…。